『あら、懐かしい。』
生徒達が教室を出た後、掃除ついでに物置整理。
見覚えのある額。
・・・もう随分と昔の話。
何処かのダンスコンテストで入賞した記念にと描いて貰った肖像画。
今でこそ、こんな小さな村で講師なんてやっているけれど、
現役時代はそれなりに活躍していた。
大きなダンスホールで脚光を浴びて、
隣の声も聞こえない程の拍手喝采を貰ったものだ。
あぁ、懐かしい。
あれからどれ程の時が経つだろうか。
肌の艶も張りもなくなり、顔には皺も増えてしまった。
時に品がないと言われた赤毛にも白髪が混じっている。
当然だけれど、以前の様に機敏さも無ければ体力も無い。
それでも過去の栄光だけは、
こうして色褪せる事なく思い出として蘇る。
この絵画のように・・・・。
あぁ、そうだ。
折角見つけたのだから、少しの間飾ってみよう。
生徒達が見つけたらどんな顔をするだろう。
最近の生徒は私を年増だとか何だとか、敬う心を忘れている。
聞かれたら答えてやろうか。
「私も昔はなかなかの器量良しだっただろう?」と。
次の朝、フロアの奥に。
取り付けが終わる頃、受講時間がやってきた。
そうして、いつもの様に教室の扉を開ける。
『狂ったように踊るのよー!はい、はい、はい、はい!』